2015年03月23日

(アーカイブ)2013年4月  高齢社会成長論 - 常識を覆せ

 先月27日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した2040年までの推計人口は衝撃的だった。少子高齢化が進み、全ての都道府県で人口が減り、2040年には総人口に占める65歳以上の割合も36%を超える。

 この将来推計人口を、日本が暗く衰退の社会に向かっていくと捉える向きは多い。だが本当にそうなのか。確かに社会保障制度やインフラなど従来の社会システムの下では、暗澹たる気持ちにならざるを得ない。なぜなら、これまでの社会システムを前提にする限り、少子高齢化と成長とは負の相関を持つからである。

 しかし荒唐無稽と批判されるかもしれないが、仮に少子高齢化と成長とが正の相関を持つように社会システムを変更することができるとしたら、将来は全く別の姿になる。これからの日本は、まさに成長のチャンスが大きく膨らむ明るい社会となる。

 そんな夢物語のような話が本当にあり得るのだろうか。1つのヒントは個人の長寿化である。一般に人は寿命が延びたからといって、必ずしも寝たきりになる期間が延びるわけではない。延びるのは健康な高齢期が延びるのである。高齢者が長い職業人生で培ってきた経験や知識を活かし、その能力を発揮する社会が実現できれば、高齢化はむしろ成長にプラスとなるかもしれない。つまり健康な高齢者が増えることと成長とが、プラスの相関を持つように社会システムを変更することが鍵を握る。

 もう1つのヒントは社会のイノベーションである。最近ジェロンテクノロジーという言葉を耳にする。医療や介護は言うに及ばず、より広く高齢者の生活や自立を支援する技術のことを言い、新しい発見、発明で産業の未来を拓いていく希望を秘めた技術として期待されている。

 これからは元気に活躍する高齢者が消費者としての存在感を高めるだけではない。高齢化に対応して社会をつくり変えることで新たなインフラ需要が生まれるなど、社会システムの変更が成長を促すかもしれない。すなわち高齢者向けの商品開発に加え、高齢化対応型の住宅やまちづくり、あるいは交通や移動システムの見直しなど、これまでとは異なる新しい技術やシステムが生まれ、それらが成長を牽引する可能性を秘めている。

 必要なことは、少子高齢化に伴う様々な課題をネガティブな問題として捉えるのではなく、それらの課題を解決していく過程で、新たなイノベーションが生み出されるチャンスとして捉える発想である。そのためにはまず、従来の考え方、すなわち少子高齢化と成長とが負の相関を持つという先入観を捨てることが重要である。そして少子高齢化と成長との間に正の相関を持たせるにはどうしたらよいかを考える。まさに逆転の発想が求められることになる。

2013年4月1日 特定非営利活動法人日本シンクタンクアカデミー 岡本憲之
posted by 毎月コラム at 09:56| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。