2015年03月23日

(アーカイブ)2014年1月  ヘルスケア活動への参加にインセンティブを与えよう

 わが国では高齢化が進む中、医療保険や介護保険といった社会保障制度に支えられる医療費や介護費が増え続けています。世代間の公平性や財政の持続可能性の観点から考えると、これからも現在の保健制度を維持するためには、保険料や自己負担割合を引き上げる改革は避けられないかもしれません。

 しかし保険料の増額や給付額の削減といった痛みを伴う改革だけではなく、もう少し前向きな改革も同時に進めなければならないでしょう。別の言い方をすると、健康を維持し病気を防ぐことができれば医療費や介護費の削減につながります。いわゆるヘルスケアです。ヘルスケア活動への参加を促進するような政策や制度の導入は、保健制度の持続可能性を高める効果があるのではないでしょうか。

 一般に社会参加には健康維持の効果があると言われています。例えば社会参加の1つの形態である就労です。実際、都道府県の中で高齢者就業率が最も高い長野県は、1人当たり老人医療費が最も少なくなっています。逆に高齢者就業率の低い福岡県や北海道は、1人当たり老人医療費が最も高くなっています。ある専門家によると、高齢者には働かせない風習があり高齢者就業率が最も低い沖縄県では、1人当たり老人医療費が高いだけではなく、寝たきりの高齢者が多いそうです。ちなみに長野県は寝たきりの高齢者が少なく、いわゆるPPK(ピンピンコロリ)を代表する県でもあるそうです。このことから高齢者の就労を促進する政策は、間接的にヘルスケア活動への参加を促していることになるのではないでしょうか。

 直接的にヘルスケア活動への参加を促す取組事例もいくつか報告されています。新潟県の見附市では、食生活、運動、生きがい、検診の4本柱で事業を展開する「いきいき健康づくり推進計画」を進めています。「日本一健康なまち」を目指すこの取組で医療費は大幅に削減されたそうです。広島県呉市でも、国民健康保険においてレセプトデータ分析や保健指導等により医療費の大幅な削減に成功しています。また米国のある事例では、1歩歩くと医療費がいくら削減されるかを研究し、エビデンスに基づく取組も行われているそうです。

 これら健康を維持するためのヘルスケア活動にとって大切なことは、それが参加したくなるようなものでなくてはなりません。つまり誰もがヘルスケア活動に参加したくなるようなインセンティブが必要です。収入と健康が同時に手に入る高齢者の就労促進は、ある意味では参加したくなるヘルスケア活動と言えるかもしれません。またヘルスケアポイント制度の導入なども検討に値するでしょう。例えばヘルスケア活動に参加することによってポイントが貯まると、そのポイントに応じて健康保険料が割り引かれるといったような制度です。

 いずれにしてもヘルスケア活動を普及させることは、高齢者の社会参加と老人医療費の削減を同時に達成することにもつながり、前向きな社会保障制度改革と言えるのではないでしょうか。そして1人でも多くの高齢者に参加してもらうためには、ヘルスケア活動に効果的なインセンティブを与える制度の導入が欠かせないと考える次第です。

2014年1月14日 日本シンクタンクアカデミー 理事長 岡本憲之
posted by 毎月コラム at 11:06| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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