2015年03月23日

(アーカイブ)2014年3月  ミックス資本主義は荒唐無稽か

 経済のグローバル化は多くの企業をグローバルビジネスに駆り立てた。大企業はグローバル競争の中で市場占有率を高めるため、合併などを通じて資本を集中させ生き残りを図ってきた。そこでは少数の勝ち組が市場を席巻し、負け組は市場からの撤退を余儀なくされる。そんな「大きいことは良いことだ」といったグローバル資本主義の世界では、むしろ不安定で脆弱な経済となってしまう恐れはないか。そして結果として若者など弱い立場の人たちの雇用機会が奪われることにならないか。

 ところで最近、デンマークなどで登場してきた別の形の経済が注目を集めている。それは分散型資本主義と呼ばれ、地域が自ら資本を集め起業するローカルビジネス中心の経済であり、「持続することは良いことだ」を目指す。利用するエネルギーも風力や太陽光など地産地消をベースとした自給自足的経済であるが、そこで生産した商品はグローバルに販売することもできる。

 もちろん日本のように経済規模の大きな国では、ローカルビジネスだけでは一国の経済は成り立たない。あくまでグローバルビジネスが基軸である。しかし、より多くの地域で地元の特徴を活かしたローカルビジネスが誕生し根を生やせば、その裾野は広がり大いなるメリットをもたらすかもしれない。

 例えばグローバル競争に敗れた企業の従業員が職を失っても、一時的にせよローカルビジネスがその受け皿となり雇用が確保されるかもしれない。若ければ再度グローバルビジネスに挑戦することもできるであろう。高齢者であって再挑戦が難しければ、そのままローカルビジネスを続ければよい。目指すは若者も高齢者も、経済の状況に応じて臨機応変に就労の機会を得ることができる柔軟で懐の深い社会である。

 そのようなグローバルビジネスとローカルビジネスが相互に補い合う経済、言い換えればグローバル資本主義と分散型資本主義のミックス資本主義とでも呼べるような経済を実現することはできないものだろうか。特にわが国のように少子高齢化が進み、財政的にも社会保障制度を維持することが難しくなってきた社会では、誰もが年金や生活保護に頼ることは不可能である。もし高齢者でも就労できるローカルビジネスが年金や生活保護の代替的役割を果たすことができれば、財政の負担が軽減され、わが国における社会保障制度の持続性を高めるかもしれない。まさにミックス資本主義の発展が国を救うかもしれないと思うのだが、そのような考えは荒唐無稽な発想だろうか。

2014年3月4日 日本シンクタンクアカデミー 理事長 岡本憲之
posted by 毎月コラム at 11:08| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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