2015年03月23日

(アーカイブ)2014年6月  アクティブ・エイジング - もたれ合いの社会から支え合いの社会へ

 最近、「アクティブ・エイジング」なる言葉をしばしば耳にする。文字通り訳せば、活動的に年齢を重ねるといった意味合いであるが、世界保健機関(WHO)では次のようなヴィジョンを実現するプロセスを「アクティブ・エイジング」という用語で呼ぶことにしている。(WHO編著、日本生活協同組合連合会医療部会訳:WHO「アクティブ・エイジング」の提唱:萌文社、2007)

 アクティブ・エイジングとは、人々が歳を重ねても生活の質が向上するように、健康、参加、安全の機会を最適化するプロセスである。つまり、有意義に歳をとるには、長くなった人生において健康で、社会に参加し、安全に生活する最適な機会が常に無ければならない。さらに、WHOは同じ報告の中で次のようにも述べている。

 「アクティブ」という言葉は、社会的、経済的、文化的、精神的、市民的な事柄への継続的な参加を指し、身体的に活動的でいられることや、労働に従事する能力を持っていることだけを指すのではない。仕事から引退した高齢者や病気の人、身体障害を持つ人であっても、自分の家族、仲間、地域社会、国に積極的に貢献し続けることはできる。健康寿命を伸ばし、すべての人々が老後に生活の質を上げていけることがアクティブ・エイジングの目的である。これには、体の弱い人、障害を持つ人、ケアを必要とする人も含まれる。

 中略

 老後に自律性と自立性を維持することは個人にとっても政策決定者にとっても重要な目標である。さらに高齢化は、友人関係、仕事上の付き合い、隣人や家族など、他者との関係の中で起きるものである。それゆえに、相互依存だけでなく世代間の連帯(個人間だけでなく高齢者と若い世代との間も含む二重のギブ・アンド・テイク関係)が、アクティブ・エイジングの重要な理念となる。

 以上のWHOの報告の背景には、すでに一部の先進国や新興国などで表面化してきている問題があるのではないか。それは高齢化と少子化が同時に進んでいることである。現役世代が引退(高齢)世代を支えるといったこれまでの社会の仕組みが成り立たなくなってきている。言い換えれば、高齢になっても最後まで社会の支え手であり続けなければならなくなってきた。例えば欧州連合(EU)は2012年を「アクティブ・エイジングと世代間の連帯のための欧州年」と定め、高齢化社会への対応を抜本的に見直そうとしている。それは、若者が高齢者を支えるという従来の社会通念から脱し、老若共に支え合う社会へのパラダイム転換を目指すものだ。(駐日欧州連合代表部の公式ウェブマガジンより)

 高齢者を含むすべての世代の人々が社会を支える意識を持つことは重要である。どんな些細なことでも構わない。仮に寝たきりになってしまった高齢者でも、自分の意思を表現することができる限り社会貢献は可能である。例えば、自分の世話をしてくれる介護者に感謝の気持ちを表すだけでも、介護者の気持ちを支えることになり立派な社会貢献である。

 日本のように少子化を伴って高齢化が進む社会において重要なことは、従来の単なるエイジングからアクティブ・エイジングへと、すべての世代の人々が意識を変えること。すなわち「もたれ合いの社会から支え合いの社会へ」の意識改革ではないだろうか。

2014年6月9日 日本シンクタンクアカデミー 理事長 岡本憲之
posted by 毎月コラム at 11:14| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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