1947年から1949年の3年間に生まれた団塊世代は現在約700万人、そのすべてが2015年までに65歳の年金受給年齢に到達する。さらにその後の2年間に生まれた広義の団塊世代まで含めると、これから向こう5年間に年金受給年齢に達する人の数は1千万人を超える。高齢者数もネットで毎年100万人ずつ増えることになる。折しも国会では、「社会保障と税の一体改革」と銘打って、2014年に8%、さらに2015年に10%まで消費税を増税する案が審議されているが、これら団塊世代を中心とした年金受給者数急増に対処する動きと解釈することもできるのではないか。
大綱骨子案が団塊世代に期待しているのは、これまでのように現役を引退して余生や老後を生きるといったイメージ、あるいは年金など社会保障によって支えられるだけの高齢者像ではない。むしろ何らかの形で仕事に従事し、社会を積極的に支える高齢者になることを期待しているのではないか。そして1人でも多く支える高齢者が増え、これまでの世代間扶養型から全員参加型の社会に移行することこそ、持続可能な高齢社会を実現する鍵になるという考え方をにじませている。
そこで高齢者が社会を支えるために活躍する、あるいは活躍できる仕事は何かを考えることが重要になる。収入は多くなくてもよい。高齢者に向いた仕事であって、若者など現役世代の雇用機会を奪わない働き方ができる仕事が望ましい。そのような仕事を提供するビジネスを、ここでは「高活ビズ」と呼ぶことにする。支える高齢者を増やすためには、今後この「高活ビズ」を開拓・創造し、その起業を促すことが急務である。
すでに「高活ビズ」として様々なビジネスが動き始めている。例えば、地域や社会の課題をビジネスの手法で解決するコミュニティビジネスやソーシャルビジネスと呼ばれるビジネスは、高齢者に向いた仕事を提供できるビジネスとして注目されている。また現役時代の人脈やネットワークを活用したビジネス、これまでの経験を活用したビジネス、身に付けたスキルや知識を活用したビジネス、シニア派遣ビジネスなど、様々なビジネスが高齢者に仕事の場、活躍の場を提供していくことになろう。
これら「高活ビズ」の普及を促進するためには、事業者の自助努力に任せるだけではなく、国や地方による行政的支援が欠かせない。また行政と事業者との間に立って、「高活ビズ」を支援する中間支援機関の育成も必要となってこよう。そしてこれから高齢者の仲間入りをする団塊世代こそが、事業者あるいは働き手として、「高活ビズ」の中心的な担い手になることを期待されているのではないだろうか。
2012年8月2日 特定非営利活動法人 日本シンクタンク・アカデミー 理事長 岡本憲之