2015年03月24日

2015年3月  「エイジノミクス」はライフスタイル革命から

 現在の統計では、65歳以上を高齢者と定義し、生産年齢人口から外して考えることが多い。つまり65歳以上の引退高齢者は、少なくとも生産活動面では経済の外側にはじき出されてしまうことになる。

 実は、この高齢者を経済の外側に位置付ける現在のライフスタイルやそれを支える制度にこそ、高齢化問題の本質があるのではないか。つまり厚生経済学的言葉で言い換えると、65歳以上の引退高齢者を、たとえ生産活動の側面だけにせよ、社会的費用(外部不経済)として扱う考え方が問題なのである。

 この社会的費用は、年金など現役世代の保険料や税で賄われる。もちろん貯蓄のある高齢者は、自分自身の貯蓄を取り崩して不足分を補い、また高齢者の消費活動は経済の内側の活動かもしれない。しかしそれでも高齢者の増加に伴い、社会的費用の賄い額はどんどん大きくなり、もはや持続可能ではなくなってきているのも事実である。

 そこで、できる限りこの引退高齢者を経済の内側に取り込んでいくことが求められる(外部不経済の内部化)。そのためには、現在の制度的あるいは慣習的ライフスタイルを変えること、すなわち「ライフスタイル革命」が必須となるのではないか。

 かつて公害問題は外部不経済として捉えられた。公害問題から生じる社会的費用は公的部門(税)が賄っていた。しかしそれでは問題に対処しきれなくなり、企業に公害防止や省エネ投資を促し、公害問題は経済の内側に取り込まれていった。当初は企業にとって費用の増大、すなわち内部不経済であったかもしれない。しかし公害問題を経済の内部に取り込むことによってイノベーションが起こり、結果として我が国は、世界に冠たる公害防止技術や省エネ技術を獲得した。まさに内部不経済を内部経済化することに成功したのである。

 公害問題に例えるのは不謹慎と叱られるかもしれないが、高齢化問題の構図も似ていると感じている。少なくとも高齢者が障害期間に入るまでの間は、高齢者もできる限り外部不経済ではなく、経済の内側に内部化され、しかもそれが内部不経済ではなく内部経済化されることを目指すべきではないか。そして、それを可能にするのがまさに「ライフスタイル革命」ではないかと考えている。

(注1)エイジノミクス
毎月コラム(バックナンバー2014年12月)参照
(注2)
「エイジノミクス」という言葉は、2014年7月7日に、「第3回高齢化世界会議招致推進の会(準備会、三菱総研会議室)」の席上で発案された。岡本憲之の趣旨説明の途中で、林玲子氏が発言したものである

2015年3月2日 日本シンクタンクアカデミー 理事長 岡本憲之
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2015年03月23日

(アーカイブ)2014年12月 エイジノミクス論 - 高齢化をチャンスと成長に変える経済

人口ボーナス/オーナス論への反論

 戦後の高度成長の要因として、しばしば生産年齢人口の増加が挙げられる。いわゆる人口ボーナス論である。そして現在の日本では、少子高齢化に伴い生産年齢人口の急速な減少が始まっている。それは経済の足かせになり、成長を阻害する要因となる。いわゆる人口オーナス論である。このまま行くと、日本の未来には暗く衰退する社会が待っている・・・・・?

 しかし本当にそうだろうか。確かに生産年齢人口の増加は経済成長の1つの要因とはなろう。しかし経済学者の吉川洋氏は、戦後の高度成長のより大きな要因として世帯数の増加を挙げている。戦後、地方から都会に出て来た若者たちは、新たに多くの世帯を形成した。いわゆる核家族化である。この核家族化の流れが、車や家電製品などの各世帯への普及を通じて高度成長を牽引したと言うのである。

 戦後の大家族から核家族への変化の本質は何かを問えば、その答えは新たな人生スタイルの登場ということになるのではないか。そして新たな人生スタイルの登場こそが、イノベーションを起こし成長をもたらしてきたのではないか。そう考えると今の高齢化の流れに対しては、生産年齢人口の減少とは違った見方ができるのではないか。それは長寿化に伴う高齢期の新たな人生スタイルの登場という大きな流れである。

 今や高齢者の人生は、昔のように老後とか余生といった十把一絡げの言葉では片付けられない。人生における長い高齢期は、多様で新しい人生スタイルの登場を意味し、それらはイノベーションと成長のチャンスと捉えることができるかもしれないのだ。

必要とされるエイジノミクス論

 多くの人は高齢化に対して、「暗い」あるいは「衰退」といったイメージを持っているようだが、それは先入観である。実際イノベーションとそれに伴う成長は変化の過程で起きる。エイジングすなわち人口構造の変化、これはイノベーションの機会である。日本をはじめ世界的に高齢化が進む中、経済の持続可能な発展に向けた道筋を改めて探るべきではないか。まさにそれこそがエイジノミクスである。

 先端医療技術の進歩など技術的ブレークスルーはイノベーションを生み出す。しかし技術だけではない。例えば高齢化は、分厚く多様でアクティブな高齢層が新たに生まれる変化である。新たなライフスタイルやワークスタイル、あるいはエンディングスタイルが登場する。また高齢社会対応のインフラや地域支援制度等新たな社会システムへの移行、共助文化の醸成、あるいは多世代共創による新たな相乗効果の創造など、すべてがイノベーションを生み出す機会となる。まさにエイジングはイノベーションの宝庫である。

 いよいよ本格的な超高齢社会を迎える日本。これからの日本は、かつての1回きりの人生「単作時代」から、平均寿命90歳を超える人生「二毛作時代」へと向かう。そしてイノベーションの機会も2倍に増える。来るべき未来で待っているのは暗く衰退する社会ではない。イノベーションに満ち溢れた、明るく活力ある社会である。そして、それを実現する経済がエイジノミクスである。

2014年12月1日 日本シンクタンクアカデミー理事長 岡本憲之
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(アーカイブ)2014年11月  エイジノミクス - 都道府県別順位

 高齢化をチャンスととらえ、活力ある高齢社会の実現に向けて頑張っている度合を、都道府県別に順位付けしてみた。評価の項目は、1人当たり県民所得、人口当たり出生率、高齢化率、高齢者就業率、健康長寿度合などである。結果、上位の県は以下の通りとなった。

1位 愛知県
2位 静岡県
3位 福井県
4位 長野県
5位 山梨県
6位 石川県
7位 広島県
8位 山口県
9位 栃木県
10位 富山県


 この順位付け、現時点では極めて大雑把なものであるが、今後より納得性の高いものに改良していきたいと思っている。

背景説明

 多くの人は高齢化に対して、「暗い」あるいは「衰退」といったイメージを持っているようだが、それは先入観である。実際イノベーションは変化の過程で起きる。エイジングすなわち人口構造の変化、これはイノベーションの機会である。日本をはじめ世界的に高齢化が進む中、経済の持続可能な発展に向けた道筋を改めて探るべきではないか。まさにそれこそがエイジノミクスである。

 先端医療技術の進歩など技術的ブレークスルーはイノベーションを生み出す。しかし技術だけではない。例えば高齢化は、分厚く多様でアクティブな高齢層が新たに生まれる変化である。新たなライフスタイルやワークスタイル、あるいはエンディングスタイルが登場する。また高齢社会対応のインフラや地域支援制度等新たな社会システムへの移行、共助文化の醸成、あるいは多世代共創による新たな相乗効果の創造など、すべてがイノベーションを生み出す機会となる。まさにエイジングはイノベーションの宝庫である。

 いよいよ本格的な超高齢社会を迎える日本。これからの日本は、かつての1回きりの人生「単作時代」から、平均寿命90歳を超える人生「二毛作時代」へと向かう。そしてイノベーションの機会も2倍に増える。来るべき未来で待っているのは暗く衰退する社会ではない。イノベーションに満ち溢れた、明るく活力ある社会である。そんな超高齢社会を実現することを、高齢化で先頭を走る日本が世界に向けて宣言しよう。

2014年11月5日 日本シンクタンクアカデミー 理事長 岡本憲之
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