2015年03月23日

(アーカイブ)2014年7月  エイジング・イノベーション -明るく活力ある超高齢社会を-

 今後、東京など大都市部では急速に高齢化が進むと言われている。一方の地方では、高齢化に加え既に人口減少が始まっている。民間の有識者からなる日本創成会議は、2040年に896市区町村が消滅する恐れがあると試算した。いわゆる増田リストである。この発表は各方面に大きな衝撃を与えた。経済財政諮問会議の専門調査会である「選択する未来」委員会も、50年後の日本の人口を1億人程度に保持すべきであるとの考え方を示した。国も人口減少に歯止めをかけようと躍起になり始めたようだ。その背景には、生産年齢人口の減少が、経済を停滞させ国力の低下を招くとの危機感がある。

 問題はその対策である。政府が打ち出そうとしている政策は、とにかく人口を増やすことだけを考えている節がある。もちろん人口減少に歯止めをかけるためにも、子供を産み、子供を育てやすくする環境の整備は極めて重要である。しかし本当にそれだけでよいのだろうか。経済学者の吉川洋氏は、実は人口と経済成長との間には強い相関は見られないと言っている。そして経済成長に最も影響を与えるのはイノベーションであるとも。

 多くの人は少子高齢化に対して、「暗い」あるいは「衰退」といったイメージを持っているようだが、それは先入観かもしれない。実際、高齢化は医療技術の進歩や経済の発展、そして平和の持続によってもたらされた。また、イノベーションは変化の過程で起きる。エイジングすなわち人口構成の変化、これはイノベーションのチャンスかもしれないのである。

 先端医療技術の進歩など技術的ブレークスルーはイノベーションを生み出す。しかし技術だけではない。例えば高齢化は、分厚く多様なシニア層が新たに生まれる変化である。それは新たな需要層の誕生でもある。この需要層を捉えることこそイノベーションである。新たなライフスタイルやワークスタイル、あるいはエンディングスタイルすら登場する。さらに高齢社会対応のインフラや制度等新たな社会システムへの移行、あるいは世代間連携による新たな相乗効果の創造など、すべてがイノベーションをもたらす。まさにエイジングはイノベーションの宝庫と考えるべきである。

 いよいよ本格的な超高齢社会を迎える日本。これからの日本は、平均寿命60年の一度きりの人生「単作時代」から、平均寿命90年の二回の人生「二毛作時代」へと向かう。そしてイノベーションのチャンスも2倍に増える。来るべき未来で待っているのは暗く衰退する社会ではない。イノベーションに満ち溢れた、明るく活力ある社会である。そんな超高齢社会を、高齢化で先頭を走る日本が世界で最初に実現したいものである。

2014年7月1日 日本シンクタンクアカデミー 理事長 岡本憲之
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(アーカイブ)2014年6月  アクティブ・エイジング - もたれ合いの社会から支え合いの社会へ

 最近、「アクティブ・エイジング」なる言葉をしばしば耳にする。文字通り訳せば、活動的に年齢を重ねるといった意味合いであるが、世界保健機関(WHO)では次のようなヴィジョンを実現するプロセスを「アクティブ・エイジング」という用語で呼ぶことにしている。(WHO編著、日本生活協同組合連合会医療部会訳:WHO「アクティブ・エイジング」の提唱:萌文社、2007)

 アクティブ・エイジングとは、人々が歳を重ねても生活の質が向上するように、健康、参加、安全の機会を最適化するプロセスである。つまり、有意義に歳をとるには、長くなった人生において健康で、社会に参加し、安全に生活する最適な機会が常に無ければならない。さらに、WHOは同じ報告の中で次のようにも述べている。

 「アクティブ」という言葉は、社会的、経済的、文化的、精神的、市民的な事柄への継続的な参加を指し、身体的に活動的でいられることや、労働に従事する能力を持っていることだけを指すのではない。仕事から引退した高齢者や病気の人、身体障害を持つ人であっても、自分の家族、仲間、地域社会、国に積極的に貢献し続けることはできる。健康寿命を伸ばし、すべての人々が老後に生活の質を上げていけることがアクティブ・エイジングの目的である。これには、体の弱い人、障害を持つ人、ケアを必要とする人も含まれる。

 中略

 老後に自律性と自立性を維持することは個人にとっても政策決定者にとっても重要な目標である。さらに高齢化は、友人関係、仕事上の付き合い、隣人や家族など、他者との関係の中で起きるものである。それゆえに、相互依存だけでなく世代間の連帯(個人間だけでなく高齢者と若い世代との間も含む二重のギブ・アンド・テイク関係)が、アクティブ・エイジングの重要な理念となる。

 以上のWHOの報告の背景には、すでに一部の先進国や新興国などで表面化してきている問題があるのではないか。それは高齢化と少子化が同時に進んでいることである。現役世代が引退(高齢)世代を支えるといったこれまでの社会の仕組みが成り立たなくなってきている。言い換えれば、高齢になっても最後まで社会の支え手であり続けなければならなくなってきた。例えば欧州連合(EU)は2012年を「アクティブ・エイジングと世代間の連帯のための欧州年」と定め、高齢化社会への対応を抜本的に見直そうとしている。それは、若者が高齢者を支えるという従来の社会通念から脱し、老若共に支え合う社会へのパラダイム転換を目指すものだ。(駐日欧州連合代表部の公式ウェブマガジンより)

 高齢者を含むすべての世代の人々が社会を支える意識を持つことは重要である。どんな些細なことでも構わない。仮に寝たきりになってしまった高齢者でも、自分の意思を表現することができる限り社会貢献は可能である。例えば、自分の世話をしてくれる介護者に感謝の気持ちを表すだけでも、介護者の気持ちを支えることになり立派な社会貢献である。

 日本のように少子化を伴って高齢化が進む社会において重要なことは、従来の単なるエイジングからアクティブ・エイジングへと、すべての世代の人々が意識を変えること。すなわち「もたれ合いの社会から支え合いの社会へ」の意識改革ではないだろうか。

2014年6月9日 日本シンクタンクアカデミー 理事長 岡本憲之
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(アーカイブ)2014年5月  高齢化と人口減少時代の社会経済 - 変革は待ったなし

 このところ我が国の人口問題に関する記事が新聞紙上を賑わせている。問題の根っこは何れも少子高齢化である。

 1つ目の問題は人口構成の高齢化である。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が今年4月11日に発表した推計によると、世帯主が65歳以上の高齢世帯は2035年に全世帯の4割を超える。高齢者(割合)の急増は、年金や医療など国の社会保障制度に待ったなしの対応を迫っている。

 2つ目の問題は人口の減少である。政府の経済財政諮問会議の下に置いた「選択する未来委員会」が今年5月中旬に中間報告として提言する内容が、5月上旬の新聞紙上で明らかにされた。仮に現状のまま推移すると、2013年に1億2730万人であった我が国の人口は、2060年には8674万人に減少する。特に働く世代の人口減少は著しい。日本の生産年齢人口は、2060年には4割以上減少して4400万人となる。労働力の減少は企業経営の制約となるのは間違いなく、日本経済の面からも早急な対応が求められている。

 3つ目の問題は人口の移動である。最近、地方では高齢者すら人口減少に転じ、人口減少が急速に進む自治体が出てきている。このまま若者に加え高齢者の人口まで減っていけば、現在の約1800ある地方自治体のうち、2040年には523が消滅する可能氏が高いという。高齢者のケアなどを仕事としている若い女性などが、高齢者数の減少に伴い地域で雇用される場がなくなり、東京などに流出していく流れを加速させる。後には高齢者だけが残され、やがてその高齢者もいなくなる。それこそ限界集落ならぬ消滅集落である。

 これからの半世紀、これら我々に突き付けられた人口問題を解決できなければ、日本が行き詰まるのは明らかである。現状の社会システムを維持したままでは、もはや持続可能な日本はあり得ないが、ここで問題となるのは社会システムをどう変えればよいかということである。子供を増やし人口構成を変えることなど一朝一夕にはできない。人口問題の根本的解決には時間がかかるからである。

 人口問題の解決に向けて模索が続いているが、実は国や企業が決断すれば今すぐにできることが3つある。それは、①高齢者すなわち支えられる者の定義の見直し、②生産年齢すなわち労働力の定義の見直し、③既得権益の放棄、の3つである。

 最初が高齢者の定義の見直しである。現在は65歳以上を高齢者と定義し、年金や医療など社会保障制度の設計も65歳が基準になっている。しかし65歳を超えても健康で元気な高齢者が増えていることから、仮に高齢者の定義を75歳以上に変更すれば、社会保障を巡る景色は随分と変わってくる。

 次の生産年齢の定義も同じである。現在は15歳以上65歳未満となっているが、最近では65歳を過ぎても労働力としての価値が残っている高齢者は多い。仮に15歳以上75歳未満を生産年齢と定義し直せば、雇用を巡る景色もまた大きく変わる。

 問題は最後の既得権益である。既得権益というと、何も農協や医師会、あるいは労働組合だけではない。社会保障制度の適用をこれまでの65歳以上から75歳以上に引き上げれば、社会保障の恩恵にあずかれなくなる年齢層の人達は猛反発するであろう。また75歳までの雇用義務が課されれば、企業の経営者だけではなく雇用の影響を受けやすい若者世代も反発するかもしれない。

 これらの反発(既得権益?)をおさえながら社会システムを変えていくことは容易ではない。しかし子供の数を増やし人口構成を変えるといった、時間をかけなければ達成できない政策の成果を待っていたのでは手遅れになりかねない。痛みを伴う政策でも、すぐに効果が現れる政策を考えていく必要がある。持続可能な社会経済に向けて、一方で既得権益の放棄という痛みをできるだけ少なくしながら、社会保障制度や雇用制度など社会システムの変革を進めていく。まさに日本人の知恵が試されているのは今である。

2014年5月7日 日本シンクタンクアカデミー 理事長 岡本憲之
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