2015年03月23日

(アーカイブ)2013年11月  高齢者の就労 - 本当に若者の雇用を奪うのか

 11月2日に放送された「熟年サバイバル術」と題するNHKスペシャルでは、珍しく高齢者の就労について活発な議論が交わされていた。今年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行されたこともあって、高齢者の就労に対する関心が高まっていることが背景にあると思われる。

 同番組の中でも話題になっていたが、高年齢者雇用に関しては気になる点がいくつかある。法律の施行で原則65歳までの雇用が企業に義務付けられたが、多くの企業は60歳定年制を崩さず、それ以降は再雇用の形で高年齢者の雇用を継続している。この事実が示していることは、企業にとって本当に必要な職域が高年齢者のために確保されているのではなく、むしろ高年齢者の雇用が福祉雇用の意味合いを帯びている現実ではないか。

 高年齢者の側にも問題がある。再雇用によって、かつての部下が今度は上司になることもある。しかし過去の立場にこだわり、なかなか意識改革ができない高年齢者も多いようである。そのため職場における人間関係がうまくいかなくなり、高年齢者は煙たがられる存在となってしまう。結果として企業の生産性にも悪影響を及ぼすことになる。

 また、高年齢者の雇用が若者の雇用に悪影響を及ぼすとの指摘がある。ただし、この指摘については反論もある。例えば、フランスで過去に行われた高年齢者の退職促進政策が、結果的に若者の就業率向上につながらなかったというデータはしばしば引用されている。

 少子高齢化で悪化する年金財政を考えると、恐らくこれからの高齢者は年金だけで生活するのは難しくなる。高齢者といえども元気なうちは若干でも収入を得るために働くことが普通になるのではないか。そのとき不可欠となるのは、高齢者と若者が雇用に関してウィンウィンの関係を構築することである。

 少子化で若者の人口は減少しており、わが国における労働力不足は深刻になってくる。高齢者と若者が共に労働力となる関係を構築することは不可能ではないはずだ。知恵を出せば、若者の雇用を奪わずに高齢者の雇用を生み出すことは可能なはずである。

 そのための取り組みも始まっている。次世代に知識や技術・技能を引き継ぐ「伝承の仕事」、繁忙期の手助けなど現役世代の仕事を補完する「高齢者派遣」、子育て支援など働く若い夫婦を手助けする「地域ビジネス」、収入は多くないがリスクが少なく若者の雇用も奪わない「ナノコーポ起業」・・・・・いずれも世代間での役割分担を目指した就労である。要は「次の世代のために高齢者ができることは何か」が重要なポイントとなる。

 わが国ではこれまで、入社が単に会社に入る就社になる傾向があった。そのため退職すると、自分は「何ができる」ではなく、「何であった」となってしまう。そうならないためには、行政であれ企業であれ、就職の本来の意味である職に就けるよう従来の制度や慣行を改めるべきである。それによって初めて退職後も働くために必要な知識や技術が身につくことになる。つまり自分は「何ができる」となる。

 短期的には多少のコストアップになっても、それが年金財政など将来の莫大なコストを回避するための道である。来るべき超高齢社会を前に、それぞれが長期的視点に立って真剣に考えて欲しいものである。

2013年11月5日 日本シンクタンクアカデミー 理事長 岡本憲之
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(アーカイブ)2013年7月  よりよい高齢社会づくりを目指す「菊リボン運動」の提案

 高齢化が進むわが国において、高齢社会をよりよくしようと頑張っている諸団体の1つ1つは、それぞれが素晴らしい活動を行っていると思います。しかし各団体の活動は、ややもすると当該団体の関係者の範囲に止まってしまっているのではないでしょうか。より広く一般の人々の認知と理解を得た活動、すなわち国民的運動にまで拡がっていないような気がします。したがって個々の団体の活動が、国民的運動にまで繋がるための仕掛けが必要ではないかと考えます。

 そこで提案ですが、毎年9月中旬頃から11月頃までを、全ての世代に優しい、明るく活力のある、「よりよい高齢社会づくり」を目指す運動の期間と定めます。ちなみに9月15日の「老人の日」から始まる「老人週間」、9月第3月曜日の「敬老の日」、10月1日の「国際高齢者デー」、長寿を願う重陽の節句(旧暦9月9日)などもこの期間に含まれます。

 その期間を、よりよい高齢社会づくりを目指す「菊リボン運動」シーズンと称し、高齢社会をよくするために活動する人々は、「菊リボン」(菊の模様をデザインしたリボン)を着用することにしてはどうでしょうか。

 つまり、この「菊リボン」を、単に高齢者だけではなく、若者世代も含め、高齢社会日本で暮らす全ての世代の人々が、「よりよい高齢社会づくり」について考え、行動するよう促し、その活動を応援するシンボルと位置づけることにします。

 結果として、少なくとも「菊リボン運動」シーズンの期間は、個々の団体の活動が国民的運動に結び付くのではないかと考える次第です。

2013年7月1日 日本シンクタンクアカデミー 理事長 岡本憲之
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(アーカイブ)2013年4月  高齢社会成長論 - 常識を覆せ

 先月27日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した2040年までの推計人口は衝撃的だった。少子高齢化が進み、全ての都道府県で人口が減り、2040年には総人口に占める65歳以上の割合も36%を超える。

 この将来推計人口を、日本が暗く衰退の社会に向かっていくと捉える向きは多い。だが本当にそうなのか。確かに社会保障制度やインフラなど従来の社会システムの下では、暗澹たる気持ちにならざるを得ない。なぜなら、これまでの社会システムを前提にする限り、少子高齢化と成長とは負の相関を持つからである。

 しかし荒唐無稽と批判されるかもしれないが、仮に少子高齢化と成長とが正の相関を持つように社会システムを変更することができるとしたら、将来は全く別の姿になる。これからの日本は、まさに成長のチャンスが大きく膨らむ明るい社会となる。

 そんな夢物語のような話が本当にあり得るのだろうか。1つのヒントは個人の長寿化である。一般に人は寿命が延びたからといって、必ずしも寝たきりになる期間が延びるわけではない。延びるのは健康な高齢期が延びるのである。高齢者が長い職業人生で培ってきた経験や知識を活かし、その能力を発揮する社会が実現できれば、高齢化はむしろ成長にプラスとなるかもしれない。つまり健康な高齢者が増えることと成長とが、プラスの相関を持つように社会システムを変更することが鍵を握る。

 もう1つのヒントは社会のイノベーションである。最近ジェロンテクノロジーという言葉を耳にする。医療や介護は言うに及ばず、より広く高齢者の生活や自立を支援する技術のことを言い、新しい発見、発明で産業の未来を拓いていく希望を秘めた技術として期待されている。

 これからは元気に活躍する高齢者が消費者としての存在感を高めるだけではない。高齢化に対応して社会をつくり変えることで新たなインフラ需要が生まれるなど、社会システムの変更が成長を促すかもしれない。すなわち高齢者向けの商品開発に加え、高齢化対応型の住宅やまちづくり、あるいは交通や移動システムの見直しなど、これまでとは異なる新しい技術やシステムが生まれ、それらが成長を牽引する可能性を秘めている。

 必要なことは、少子高齢化に伴う様々な課題をネガティブな問題として捉えるのではなく、それらの課題を解決していく過程で、新たなイノベーションが生み出されるチャンスとして捉える発想である。そのためにはまず、従来の考え方、すなわち少子高齢化と成長とが負の相関を持つという先入観を捨てることが重要である。そして少子高齢化と成長との間に正の相関を持たせるにはどうしたらよいかを考える。まさに逆転の発想が求められることになる。

2013年4月1日 特定非営利活動法人日本シンクタンクアカデミー 岡本憲之
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